バリアフリーを阻む“数字の落とし穴”
バリアフリーの必要性を説明しようとする時、時にこんな数字の落とし穴にハマることがあります。
令和元年版 障害者白書(内閣府)の報告
国民のおよそ7.6%が何らかの障害を有していることになる
という、この「障害者の状況」を示す数字を例に説明すると…
バリアフリーに取り組まない・二の足を踏む理由として、
「たった7.6%の人ために、多額の投資をするのは無駄である」という論法。
かつて、経済界系のおじさん達などがよく口にしていました。
さらに、もう一つ…
「超高齢社会の日本だからこそ、バリアフリーが求められる」という概念に対し…
日本の総人口 に占める65歳以上の割合(高齢化率) 28.1%(2018年10月1日現在 零和元年版 高齢社会白書)をあてはめ…
「いや、ウチの店の顧客層はサラリーマンの現役世代だから。72%の方で勝負しているから必要ない」というもの。
実はこれらの数字を元にしたアンチ・バリアフリー的論法は、
バリアフリーを、たった7.6%や28.1%の「特定の誰かを対象にしたもの」と、
捉え違いしていることから生まれた発想。
そもそもバリアフリーが目指す、
「出来るだけ多くの人の利用を可能にする」=massを広げる概念だということを理解していないことから起こる数字の落とし穴。
野球に例えるなら、
特定の玉しか打てないバッターより、
あらゆる球種に対応できるバッターを起用した方が、より多く得点する可能性がひろがるでしょ?という話なのです。
階段だけしかない入り口より、スロープつきやフラットの方が多くの人が入れますよね。
しかも…
7.6%という数字は、「障害者手帳」を所持している人の数をベースに算出された概算で、自ら、あるいは家族が申請していないことで手帳を持っていない障害がある人の数は含まれていませんし、
28.1%という数字も単純に65歳以上の人が人口にしめる割合を計算しただけのもの。
そこには、ベビーカーを押す若い親世代、幼い子供、キャリーバッグをひく観光客、腰痛や膝痛を抱える人、そうした症状を持つ人と行動を共にする家族や知人などなどは、まったく反映されていないのです。
バリアフリーは、「全ての人」とはいかないまでも、「できるだけ多くの人に優しい」=客層の拡大を可能にする形であり、
単純に数値化できない多くの人々をも内包する考え方。
今後さらに多様性ある社会へと変化しゆく時代に不可欠な考え方であることを今一度、落とし穴にハマって立ち往生することなく、お伝えしていきたいと思います。
バリアフリーフロント 2019.11.26コラムより転載
〈出典〉
令和元年版 障害者白書-内閣府 「障害者の状況」https://www8.cao.go.jp/shougai/whitepaper/r01hakusho/zenbun/pdf/ref2.pdf
令和元年版 高齢社会白書-内閣府 「高齢者の状況」https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2019/zenbun/pdf/1s1s_01.pdf